ハザードマップを使った水害対策と損害保険

202015Feb.

2019年に東京都江戸川区が作成した「水害ハザードマップ」が話題になったのをご存知でしょうか。なんと「ここにいては、ダメ、全員が区外へ避難を」といった内容を明確に記載したことで、専門家だけでなく区民からも大きな議論を呼びました。台風や大雨による河川の氾濫、土砂崩れ等の水害は地域によって対策が必須ともいえる重大なリスクです。

東京都江戸川区は水害リスクが高い

東京都江戸川区は、2019年5月に水害ハザードマップを改定しました。その中で、想定される最大規模の台風や大雨に見舞われた場合、高潮や洪水によって区内ほぼ全域が水没するという想定を公表しました。

江戸川区は東京湾と接しており、荒川、中川、江戸川など多くの河川が集まる地域です。江戸川は利根川と分岐するため、埼玉や群馬などで降った雨も江戸川を通り東京湾に流れ込むことになります。さらに、区の7割が海抜ゼロメートルで、周辺の河川の水位は江戸川区の大半より高いです。こうした要因から周辺河川の氾濫や東京湾で高潮が起きた場合、下記のような被害が想定されています。

■想定される被害

・区内がほぼ水没

・避難場所も浸水

・建物4階まで浸水(最大10メートル以上の浸水)

・場所によっては水が引くまで2週間以上

・ライフラインも2週間以上止まる(水が引かないと復旧できないことも)

上記のような想定から、江戸川区はハザードマップの中で、約70万人の区民へ向けて、有事の際は区内にとどまらず、浸水被害のない地域への広域避難を促しています。大まかに言ってしまうと「水害時はとにかく逃げることと、そのための事前準備をしてください。」というメッセージを自治体として真剣に発信しています。

■ハザードマップの受止め方

作成するにあたり担当者の間で、表現等いろんな議論や葛藤があったのではないかと思います。このハザードマップを江戸川区、周辺区民の方はどのようにとらえたらいいのでしょうか?

基本的には、正面から受け入れていただくのがいいと思います。ハザードマップは科学的根拠に基づいて作成されており、過去の災害においても、例えば河川が決壊した場合の水没地域を見ると驚くほどハザードマップと一致していたりします。

ハザードマップは、最悪の事態を想定しています。今すぐ生活が出来なくなるわけではありません。素直に事実を受け止めて、それに備える姿勢が大事です。逆に言えば、災害前にハザードマップを確認していれば、いち早く避難が出来て身の安全を確保できることになります。

水害の種類と原因

江戸川区を脅かす水害とは具体的にどんな災害でしょうか。一般的に水害とは「大量の雨が降る事によって引き起こされる災害」を総称する意味で使われています。台風やゲリラ豪雨のように集中的に多くの雨が降る場合や、梅雨などで長期間にわたり降り続く雨等でも引き起こされることがあります。

想定される被害としては、大まかに下記のようなものがあり、比較的広い範囲に影響を及ぼす床上浸水や家屋が流される等が代表的です。一度起こると人の生活や事業活動に深刻な影響を与える災害と言えます。

水害の種類

洪水水が溢れる事態の総称。大まかに下記2つに分かれるとされる。
1:河川の限界を超えて水が溢れる。いわゆる河川の氾濫、堤防決壊等(外水氾濫とも言う)
2:市街地等の排水処理能力を超えて水が溢れる。マンホールから水が噴き出す等(内水氾濫とも言う)
波浪風によって海面に波が起きる事。風が強いと波も高くなりやすい。
高潮台風や低気圧によって、海面が吸い上げられたり、海岸に引き寄せられたりすること。
その状態で波浪と組み合わさり堤防超えたりする可能性が高くなる。
土砂災害がけ崩れ、地すべり、土石流等。地面が水を含むことで山腹が崩れる等。

  • 水害を引き起こす2つの要因

深刻な被害を生みやすい水害ですが、実はハザードマップを活用したリスク予測と対策に取組みやすい災害でもあります。それは水害が下記2つの要因が合わさった時に、より大きな被害を生む傾向があるからです。

天候・気象(台風やゲリラ豪雨等の大雨) ×  地形・立地(どんな場所か)

雨を降らせる台風や大雨等は直接的な原因ですが、地形・立地の影響を受けて被害が拡大していく災害です。一般的に下記のような場所は特に注意が必要と言われています。

■水害注意の地形・立地

・河川が近い(土砂によって作られた扇状地、水が溢れやすい氾濫平野に該当する可能性)

・周囲より標高が低い(水が流れ込み、溜まりやすい)

・埋め立て地(昔は農地や沼だった場所等の可能性)

・谷の間や底(土砂災害の可能性が高い)

・山の裾野(土砂災害の可能性が高い)

・湿地(水が溜まりやすく、乾きにくい)

その土地が上記のような場所に該当するかは、地形学、過去の被害状況等はもちろん、昔の地図、地名など様々な要因から知ることができます。個人や企業が各自で上記を調べるのは難しいですが、ハザードマップは地形学などの科学的根拠、過去の被害等をもとにして作成されています。そのため高い信頼性を持った被害予測ができるのです。

ご自分の住んでいる地域、お勤めしている地域のハザードマップは、市町村窓口や区役所に置いてあります。また、国土交通省のホームページや各市町村のホームページでも確認することが出来ます。まだご自身の事務所や自宅のハザードマップを見たことがない方は、ぜひ一度確認していただければと思います。

水害と損害保険

水害は、上記のように「場所」が重要なポイントになるため、被害が起きないようにする「予防」が難しい災害です。起きないようにするには、治水工事、建物の基礎を高くする、移転・引越等、かなり大掛かりな対策が必要になってきます。そのため確実に実行できる対策としては、避難場所や経路の確認、避難用グッズ準備、備蓄品の用意等、起きた後の対策がメインになってきます。

こうした水害が起きてしまった時に備えるために検討していただきたいものの一つが「火災保険」です。火災保険は一般的に自分の建物や動産が被害を受けたときに備える商品です。どこまでカバーできるかは保険会社の商品によって異なりますが、設定によっては火災だけでなく水害対策にも活用できます。

  • 火災保険を確認するポイント

まずは、いま加入されている火災保険が水害に対応できる内容になっているかをぜひ確認してみてください。基本的に、下記3つのうちのどれかに該当すると思います。

■水害補償状況3つのパターン

①対応できる

②少ししか対応できない

③対応できない

特に注意が必要なのは「②少ししか対応できない」場合です。一見対応しているようでも、様々な条件が付いている場合があります。従来からある住宅総合保険や店舗総合保険という商品に加入している場合は、②に該当する可能性が高いのでよく確認してください。「③対応できない」場合は、被害があっても保険に頼ることができません。「①対応できる」場合も、保険会社が決めている一定の条件を満たさないと対応できなことが一般的です。

心配な方は、一度専門家に保険証券を見てもらい、今の契約内容が上記3つのどれにあたるか細かい条件まで含めて確認する必要があると思います。

  • 危険度を知ることが最初のステップ

火災保険における水害をカバーする部分は、販売するときに下記等の理由で外して提案されることがあります。

マンションの1階じゃないので水が来ることは無いでしょう


河や海の近くじゃないから


高台にあるから

本当でしょうか?。確かに一概に間違っているわけではありません。しかし、江戸川区のハザードマップでは4階まで水に浸かるとあります。高層階だからといって水災危険を安易に外すのは状況によっては間違った選択になるかもしれません。また、広島の水災でも2階にあった歯科医院が水没して医療機器が全滅したケースや、土砂災害で家ごと押しつぶされてしまったケース等もあります。「何となく」や「一般論」で判断せず、ハザードマップで危険度をしっかりと確認したうえで判断することをお勧めします

水害は予防が難しく、深刻な被害になりやすい災害です。まずは、ハザードマップをぜひ確認してみてください。弊社でも契約内容確認、ハザードマップを使った危険度チェックやご提案も可能です。心配な方はお問い合わせください。


保険記事について

保険記事は、”法人向け保険”のノバリ株式会社が運営しています。

皆様が日々抱える問題を中心に、保険で出来るアレコレや周辺情報等をお伝えしています。

個別のご相談やご要望も受け付けてますので、何か「もやもや」がありましたら、ぜひお気軽にご用命ください。